第30回 AIと綴る心の断章

この連載は、日々の中にふと立ちのぼる感情や、社会の片隅で揺れる思索を、AIとともに形にしていく試みです。 言葉を通して、私たちが見落としがちな「こころの風景」をすくい上げる——そんな静かな対話の記録です。 毎回、ひとつの断章として、小さな物語・詩・エッセイをお届けします。 今回の断章は―― ・過去という地図を、一度畳んでみる を描いたエッセイです。 過去という地図を、一度畳んでみる 「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」 有名なこの言葉を耳にするたび、理屈では分かっていながら、心の一部がどこか別の場所に取り残されているような感覚を覚えることがあります。仕事でミスをした夜、あるいは数年前の選択をふと思い出す時、私たちの意識は「今」を留守にして、変えられない過去という広大な迷路を彷徨ってしまう。 先日、AIと対話を重ねる中で、ふとした違和感に気づきました。 AIにとって過去は「学習データ」であり、精度の高い未来を予測するための材料です。データが多ければ多いほど、出力は安定する。しかし、私たち人間はどうでしょうか。 過去を振り返りすぎているとき、私たちは「今の景色」を直視することに怯えているのかもしれません。現状に何らかの閉塞感があるとき、人は無意識に「あの頃」という安全な場所に逃げ込み、改善の余地がない後悔に時間を費やすことで、今日という日をやり過ごしてしまう。 過去を振り返ることは、本来、技術的な作業であるはずです。... 続きを読む