はじめに 前回(上)では、狩野新監督と内田新コーチの体制が抱える 「首脳陣の経験値不足」 「人間関係の薄さ」 ピッチ内外で起きる「無意識の序列化」 という冷徹なリスクについて論じた。 純粋なコーチングの現場論から逆算すれば、この人事が上手くいく確率は極めて低い。それが私の冷徹な見立てだ。 しかし、日本サッカー協会(JFA)がこの「危うい賭け」に出た背景には、現在の日本女子サッカー界が直面している、ある深刻な構造的課題がある。 そして、内田篤人という「規格外の劇薬」の投入は、ピッチ内の戦術論を超えた部分で、女子サッカー界の停滞した空気を一変させる二つのポジティブな可能性(地殻変動)を秘めていることもまた、事実なのだ。 今回は、この新体制がもたらし得る「最大のメリット」と、私たちが最後にすがるべき「真の希望」について、前体制の歪みと対比させながら解剖していきたい。 視点①:「内田の目」というメディア導線――前監督の“アリバイ視察”を超えて 現在の女子サッカー界(WEリーグを含め)が、観客動員やメディア露出の面で深刻な苦戦を強いられていることは、データを見るまでもない周知の事実だ。来夏のワールドカップに向け、世間の注目を引く「強力なフック(広告塔)」をJFAが切望したことは想像に難くない。 内田氏の起用は、まさにその思惑に合致する。彼がWEリーグのスタンドに現れるだけで、スポーツ紙のカメラマンが動き、ネットニュースのトップに見出しが立つ。これは、狩野監督や他のコーチ陣、あるいはJFAの地道な広報努力だけでは絶対に不可能な、内田氏個人が持つ圧倒的な「コンテンツ力」のなせる業だ。 ここで、前監督ニルス・ニールセン氏の「視察」を振り返ることで、この価値がより明確になる。... 続きを読む
